ベストキャリアの作り方

レッドオーシャンを目指すな〜IT監査でオンリーワンの地位を築いたA氏

本日より、新連載、ベストキャリアの作り方を掲載いたします。
この連載は、私の日々のおつきあいや、ヘッドハンティングの仕事のなかで、これはとおもったキャリアに注目し、成功のキーポイントについて解説してみます。
第一回で取り上げるのは、監査法人でベストキャリアを構築したAさんのお話をとりあげ、レッドオーシャンを目指さない、ということについて理解を深めたいとおもいます。

レッドオーシャンを目指すな〜IT監査でオンリーワンの地位を築いたA氏


Aさんのキャリアを簡単に解説すると、
大学卒業後、大手のコンサルティング会社に入社、その後、4大監査法人の一角をしめる法人で、IT監査部門のシニアマネージャーとして活躍されています。

Aさんは、現在、監査法人内でITと業務プロセスが分かる貴重な人材として、会計士がカバーできない仕事の領域をリードし、IT監査やアドバイザリービジネスといった、監査法人内の成長を担う重要なポジションで社内をリードしています。
「好きなことができていて、非常にたのしい」というAさん。

Aさんのキャリアのポイントはどこにあるのでしょうか。

まず、Aさんは、大学卒業後、大手のコンサルティングファームに入りました。若いうちはシステムの構築に携わり、プログラミングもしたことがあります。ITに精通し、そして業務についても精通していきました。製造業の会計システムやBPRなどに携わり、業務の改革からシステム導入まで一貫してできる専門性をたかめつつマネージャーに昇進しました。

さて、ここで、
「戦略にいきたい」とか「再生ファンド」
に行きたいといった話しがでてくることも多いのですが、
Aさんが次の転職先に選んだのは、なんと監査法人でした。

監査法人ということは、会計士?
とおもうのが普通の視点です。

普通のキャリアアップのセオリーでは、
会計士の資格をとって、監査法人に転職して、より高級の会計士という立場にステップアップするという考えが主流でしょう。
これを資格による梃子と名づけましょう。

しかし、Aさんが取ったほうほうは、資格による梃子ではありませんでした。
自分がもっとも得意とするITコンサルティングの経験を梃子にしたのです。

Aさんは、監査法人に転職したのですが、
会計士と同じ仕事にあこがれて、ではなく、それも求めませんでした。

監査法人に加わった理由は、当時ほとんど注目されていなかった、
IT監査のチームの立ち上げに加わるためです。

昨今は会計処理や業務がすべてERPを含めたITシステムの上で処理されています。ITシステムが適切に運用、構築されていて、会計報告の基本となる数字が正しくシステムで処理されているか、改ざんなどがないか、などを監査するのがIT監査の仕事です。

J-sox法などの施行にともない、会計とITは一体で監査するものという認識が高まるとの読みがあったのです。事実海外では、IT監査の重要性はとても高くなり、なくてはならないサービスになっています。

正直、世の中の風潮では、会計士の集まりのなかで、ITというのはあまり高い位置づけにはみられてないというがありました。
しかしながら、IT監査を重要なビジネスといちづけ、会計士と同様の待遇で迎えてくれる監査法人に、ヘッドハンティングされて転職したのです。
(くどいようですが、この転職では、会計士的仕事ができるわけではなく、IT監査という会計士とは別の仕事をやるための転職です)

会計士でITが分かる人は、実際ほとんどいないというのが実情だといいます。会計士にとって、肝心の会計データが吐き出されるITシステムはブラックボックスなのです。

Aさんは、ITコンサルティング時代につちかった、ITと業務プロセスの知識をフルに生かして、IT監査分野でリーダーシップを取りました。
IT監査の仕事には、ITコンサルというバックグランドが最強の武器になったのです。IT監査には、ITと業務の両方に精通している必要がありますが、そういう人材は、会計士プロパーでは絶対にそだちません。かといって、システム構築だけの会社にも見つかりません。ITコンサルという経験が、まさにこの仕事にぴったりだったのです。

というわけで、Aさんは、社内の会計士にはだれもできない仕事を、前職の能力をつかって、どんどんとリードします。
というわけであっという間に出世です。

そして、現在は、IT監査もやりつつも、さらに領域を広げ、コンサルティング業務や、アドバイザリー業務とったところをリードするようになっています。つまり、だんだん、会計士の方ともやることが似てきたわけです。

ブルーオーシャンと、レッドオーシャンのたとえでこれをみてみましょう。

レッドオーシャン=資格、公認会計士
ブルーオーシャン=IT監査

Aさんは、資格をとってレッドオーシャンに挑むといったようなことは決してしませんでした。大学在学中に資格をとってプロパーで入社した会計士にはかなわないからです。30を超えて、会計士になって、一から監査法人ではたらいても、肩書きは公認会計士というかっこいいものがとれるかもしれませんが、ぺーぺーのままです。過去の経験がいきません。

そこで、ブルーオーシャンを目指したのです。
監査法人内で、内部の人がだれもできない・苦手の分野を、別の分野の経験を持っているからこそできるという助っ人として、転職する。理想のヘッドハントのパターンです。

そして、Aさんは現在大いに出世し、会計士プロパーのレッドオーシャン的なところでも、パートナー級として活躍しています。

ブルーオーシャンから入って、レッドオーシャンの勝負でも勝つ

これが究極に賢いキャリアの作り方です。

ヘッドハントというと、自分のやったことのない分野にいきなりチャレンジできるものという誤解があります。そうではありません。求人企業は、あなたの現在の経験がほしいわけです。それを異分野や異職種にて発揮してほしいがためにヘッドハンティングしています。
ですから、そこで力を発揮する。その会社にとってブルーオーシャンな分野でリーダーの人物になる。すると、マネジメントや役員への道がひらけてきます。そしていつのまにか誰もがうらやむ立場のキャリアを構築できたりするものなのです。

次回も、ブルーオーシャン戦略でキャリア構築に成功した方の事例をとりあげます。

大石哲之(おおいしてつゆき)
コンサルタントナビを運営するティンバーラインパートナーズ代表取締役。
慶応義塾大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)戦略グループ入社後、ベンチャー企業の起業を経て、2004年現職。
著書に「3分でわかる ロジカル・シンキングの基本」、「よくわかるコンサルティング業界」(いずれお日本実業出版社)、「地頭力が強くなる!」(中経出版)「ロジカルシンキング・リーディング」(ベストセラーズ)「過去問で鍛える地頭力-外資コンサルの面接試験問題」(東洋経済新報社)などがある。講師、公演、セミナーなど多数。

2009-12-03 14:15:10
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