「30歳までに経営幹部になれるキャリアの作り方」バックナンバー

30歳までに経営幹部になれるキャリアの作り方

第2部第6回:実録!経営幹部行きキャリア 成功と失敗のケーススタディからのまとめ

実録!経営幹部行きキャリア 成功と失敗のケーススタディ

 ここまで、「第2部実録!経営幹部行きキャリア 成功と失敗のケーススタディ」ということで、私が今まで会ってきたさまざまな人々の事例を参考に、そのキャリアにおける成功と失敗の理由について考察してきている。
A氏:コンサルタント出身で上場企業の社長まで上りつめた(成功例)
B氏:コンサルタント出身だが、立上げスキルが足らずこじんまりやっている(失敗例)
C氏:会計士、コンサルパートナーから大手上場企業の副社長まで昇進(成功例)
D氏:ERPコンサルタントでパートナーになったが先のキャリアが見えない(失敗例)
E氏:大手外資系ITメーカー営業からコンサルに転進したが、元に戻った(失敗例)

 成功例に共通して言えることは、キャリアアップに必要なスキルをちゃんと蓄積した上で、ステップアップしていることにあるし、失敗例に共通していることは、キャリアアップに必要なスキルが足りないまま、あるいは足りないことに気づかないまま転職したり、キャリアを模索していることで、先に進まなかったり、元に戻ったりしていることにあると考察できる。
 それでは、これらの事例などから言える成功例に共通のポイントについていくつか整理したいと思う。

*注:なお、各人のプライバシーを守るため、これらキャリア事例は似たキャリアを持つ複数人のものをベースに典型的なケースモデルに再編集しているのであしからずご理解いただきたい。

根本的な『性質』

1. 最終ゴール(どうなりたいのか)のイメージを持っていて、できれば大きな社会的目標であること。
A氏、C氏に共通して言えることは、何か社会的課題を認知していて、この社会的課題を解決すべく、邁進していることで、自身のモチベーションを高いところに置き、行動指針としているとともに、顧客を含めた周りの人をひきつけている。

2. 目標にたどり着くためのキャリア段階に応じたイメージアップを詳細(時期、数値)にできること。
特にA氏だが、「30歳代で10億円の資産を持ちたい」と言っている。こう言い切るには、何らかの準備が既にその前に出来ているからこそ、このような発言が出てくるのであろう。事実、彼の若いころからのキャリアは全てこのゴールに集約していたともいえるだろう。

3. 一度決めてもキャリアの段階につきこだわらないこと。すぐ動けること。情報を集めること。
A氏はコンサルタントから営業、営業から社長へとキャリアアップするにあたり、それまで培った各種の能力を十分に溜め込んだうえでキャリアチェンジに成功している。またC氏においても会計士からコンサルティング会社のパートナーそして、IT企業の役員へと同様にキャリアチェンジに成功している。自分のキャリアの幅を広げるにあたり、それまでのスキルを活かしながら、既存の会社・職種にとどまることなくキャリアアップを成功させている。

4. 「他の人と同じではいやだ」と思っているので人マネが大嫌い。人と同じものを会社などから与えられるのもますます大嫌い。
これは、A氏、C氏に限らず、私が出会った成功例のキャリアの持ち主はほとんど全て、その人、その人の考えと、生き方を持っている。「ただ、他の人と一緒でいい」と考えている人はたいていの場合、「ただ、他の人と同じ」普通のキャリアになるケースが多いと思われる。

5. 己の能力を知っていて過信しない。いつでも「仲間やお客様のおかげ」と感謝している。
B氏、D氏、E氏に共通した問題は、それまでのキャリアにおいて、必要なスキルが十分に身についていないまま、転職してしまったり、起業してしまったり、次のステップに行ってしまったことにあるようである。いつでも「仲間やお客様のおかげ」と感謝している人のところにはきっと仲間やお客様が集まるに違いない。

必須の『能力』

1. 顧客獲得能力: 顧客をどんどん獲得できないとビジネスは成立しない。本当に顧客獲得できる能力のある人はいつでも引っ張りだこ。
A氏の営業経験はもちろんのこと、C氏も固定客をつかんでビジネスを成功させている。またB氏は営業経験があるものの、固定客を開拓する能力がもっとあればビジネスは大きくできたと思われるし、D氏はほとんど開拓経験が無い。E氏は営業として開拓経験はあるものの、会社の固定客を自身の固定客と勘違いしてしまっている。会社の資源をうまく活用して、会社にリターンを戻しながら、自分自身の固定客をどんどん、どのようにつかむのか?この能力が有るか無いかが、経営を志向するキャリアにとっての全ての分かれ目かもしれない。

2. 人材獲得能力: いい人が集まらない(いい人が育たない)と事業は大きくできないし、目的達成は難しい(一人だけでできることは限られる)。
A氏、C氏とも、いい固定客が集まり、更に、回りにいい人たちを集め育成できたのがそもそも成長と成功のきっかけである。それでも、そのA氏でさえ、自分が優秀すぎて右腕や跡継ぎをうまく育成できずに困っている。さらに自分の組織(事業)を拡大させ、思いを成し遂げるにはいい人を集め、育成する能力が必要不可欠である。

3. 資金獲得能力: いい人といい顧客が集まれば自然と儲かる事業が生み出されるため資金は集まり、ビジネスも形になる。
起業する場合においては、資金獲得能力も重要なファクターである。しかしながら、いい顧客と人材が集まってくる事業においては必ず利益が十分にもたらされる保障があるため、資金は自然と集まってくる。

簡単にまとめると、この図のようになる。


 上記、<根本的な『性質』>は一種の癖のようなものであり、時間をかけて育まれる要素でもあるかと思われるので、日ごろの心がけ次第で、徐々に身につく可能性がある。一方、<必須の『能力』>は心がけと言うよりは、経験そのものがないと付かない能力である。顧客獲得能力と人材獲得能力は特に、若いうちからスキルを身につけられる環境にいるかいないかで、スキルの習得に大きな差がつく能力である。

以前、第9回などでも述べたが、もし、上記、<必須の『能力』>をすばやくつけたいのであれば、若いうちに顧客と切磋琢磨でき、仲間を増やし、仲間を育成する能力を自ら育める「プロフェッショナル型キャリア」を志向するのが最も近道のように思われる。

<プロフェッショナル型キャリアの長所>
☆早いタイミングから顧客に評価され、自立を求められるので力がつく。
☆一人前になればどこに行っても、何をしても自由。
☆一人前になれば、一般的に同世代の普通の会社員より給料が高い(1.5倍から10倍以上)。
☆将来的にローリスクでハイリターンなプロフェッショナルファーム事業を立上げ、運営するチャンスがある。
☆弁護士や会計士、コンサルタントなど、一般企業経営に必要なスキルがついていれば、普通の企業経営にキャリアチェンジできる。
☆プロであるということが自立していると言うことで、それ自体、生き方として誇らしいことかもしれない。

「第2部 実録!経営幹部行きキャリア 成功と失敗のケーススタディ」ということで、私が今まで会ってきたさまざまな人々の事例を参考にさまざまなキャリアを紹介してきた。
振り返っていえることは、やはり、まずは目標を決めること。そして目標に向かって着実にスキルとキャリアを積むことが最も重要。「世の中のためになる事業をしたい」などの、目標がはっきりしていれば、スキルやキャリアは同時並行的に積めることがわかっている。いま、自分が一社員だからといって、単なる一社員のつもりのみで仕事を遂行するのか?それとも「自分が管理者だったら?経営幹部だったら?社長だったら?株主だったら?顧客だったら?どうするか?」同時並行的に一生懸命考えて、その上で仕事をしているかどうか?によってその人が気づく幅、経験する幅、考えられる能力の幅は全く変わってくる。より高い目線で、あたかも自分がより良い経営幹部になったつもりで、またはより良いオーナー株主になったつもりで、いつも考えていれば、より早く、経営幹部に必要な能力が自動的に身についてくるものだ。
経営幹部の悩みはたいてい、いつでも顧客の事と仲間である社員の事である。

全体のまとめ


 「30歳までに経営幹部になれるキャリアの作り方」ということで17回にわたって連載してきた。この間に、景気は一気に下降し、プロフェッショナル職を問わず、ビジネスの世界を目指す人たちにとっての環境は一段と厳しい状況になっている。多くの企業は採用を抑制し、新規事業を凍結し、外注や派遣に関する予算を大きく削減している。このような中、新卒者を含む就職希望者の方向性は「より安定を求めて大企業」に集中してきていることも確かだ。
しかし、今、人材を大量に放出しているのもその「大企業」であることを忘れてはいけない。このような時代においても全ての企業がだめになっているわけではない。業績が低迷している多くの企業を横目に、業績が上昇している企業もたくさんある。また、業績が低迷している企業のなかで、主力事業を守るために能力を発揮したり、低迷部分を埋めるために知恵を使って新規事業立上げを進めながら、どんどんスキルをつけている猛者もたくさんいるはずである。
 結局のところ、グローバル化とIT化、そして、高齢化社会の到来により、ビジネス環境や生活環境の変化はますます急速に、確実にやってくる。「これらの変化を身近に感じてすばやく動いてチャンスをつかめる人たち」と、「これらの変化の遠いところにいてチャンスをつかめないどころか変化の割を食う人たち」のどちらの集団に入るのか?自分の将来を決めるのは結局自分自身しかない。
 第1回で述べたが、「いい大学出て、いい会社に入って、ちゃんと勤め上げると、安定したいい余生が送れる」という時代は終わった。読者の皆様においては『会社は自分のキャリアと時代の変化を見ながら使いこなすもの』と考え、『自分の人生の選択は自分の頭でよくよく考えて、自分で決めること』を通じて、是非とも身のある充実した人生を送っていただきたいと思う。

前回(連載第2部第5回のミニテストと模範解答)
第一問:E氏が異例の昇進を遂げた理由はなぜか?
A1
E氏のキャリアアップの源泉は若いうちのコツコツと積んだ営業経験。「口のうまさ」と「ゴマすり」、「要領のよさ」などのコミュニケーションテクニック。あとは運良く「革新的新製品」が「ブランドと製品の機能のおかげ」で成績が上がったからである。

第二問:E氏がコンサルティング営業としてうまく行かなかった理由は何か?
A2:
かつての顧客は挨拶で会ってくれることはあっても、ほとんど仕事をくれることは無かった。「機能が確実に出来上がっている製品の営業」ではなく、「顧客ごとの経営課題に個別に対応しなければいけない、ソリューションの営業」である。E氏はいままで「顧客ごとの経営課題」など深く考えたことも無いのである。つらくなったり、影が薄くなると、どうしても連発してしまうのが「おれはかつてXXだった」のような根拠の無い自慢話である。提案しなければいけない、自分の部下の営業担当たちはもとより、売るべき「コンサルタントのチーム」からも煙たがられる存在になってしまった。

第三問:E氏がコンサルティング営業としてキャリアアップするために必要であった、転職前にしておかなければいけなかった経験とは何か?
A3:
形だけのコミュニケーションテクニックだけでなく、「本当の顧客の課題を理解し、本当に顧客のためになることを徹底的に実施すること」で、真の固定客を開拓するよう努力するべきであった。

*注:テスト問題の性質上、回答案は著者の視点からの回答案の一つであり、すべての答えを網羅的にカバーしているとは限りません。

松川 孝一
シンクログローバル株式会社 代表取締役社長
株式会社日本ピーエスエス 代表取締役社長
早稲田大学商学研究科、早稲田大学ビジネススクール 客員教授
早稲田大学IT活用新ビジネス研究会 副理事長
学習院マネジメントスクール 講師・顧問

東京工業大学工学部生産機械工学科卒業。
プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社入社。PwCコンサルティング株式会社 執行役員 パートナー、アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティングサービス株式会社 執行役員 パートナー 公益事業部長、株式会社大洋システムテクノロジー取締役を経て現職。
また現職のかたわら、早稲田大学ビジネススクール客員教授としてIT戦略マネジメントの授業、学習院マネジメントスクール顧問・講師としてABC/ABM、プロジェクトマネジメントの授業を受け持つ。

主著に「図解ABC/ABM(第二版)」東洋経済新報社、共著に「MOT」入門日本能率協会マネジメントセンターなどがある。
ここまでの約10年間の間、計500人以上の様々な会社におけるのプロフェッショナル職のキャリア相談を受けている。
現在、従来からのコストダウン、シェアアップのコンサルティングに加え、新しい事業コンセプト・事業モデルの開発にチャレンジ中。

http://www.syncgl.com/【シンクログローバル株式会社】
http://www.winb.org【早稲田大学IT活用新ビジネス研究会】


2009-03-02 15:00:00
コンサルタントナビに掲載されている画像・文章・データの無断転載を禁じます。
すべての著作権は株式会社ティンバーラインパートナーズ(コンサルタントナビ運営)に帰属します。
Copyright(C) 2004-2008 Timberline Partners, Inc. All Rights Reserved.
なかのひと