
第2部第3回:ケーススタディ3=IT系企業副社長C氏
実録!経営幹部行きキャリア 成功と失敗のケーススタディ
今まで、「第1部 経営幹部を目指す人のキャリア設計の考え方」という形で進んできたが、第2部として「実録!経営幹部行きキャリア 成功と失敗のケーススタディ」と題し、私が今まで会ってきたさまざまな人々の事例を参考に、そのキャリアにおける成功と失敗の理由について考察したい。なお、各人のプライバシーを守るため、これらキャリア事例は似たキャリアを持つ複数人のものをベースに典型的なケースモデルに再編集しているのであしからずご理解いただきたい。
第1回では、コンサルタント出身者でビジネスを成功に導いたA氏とビジネスの先が見えなくなったB氏を紹介した。今回第3回は、会計事務所、外資系コンサルティング会社にてプロフェッショナル経験を積んだ後、国内のIT系企業で副社長としてバリバリ変革経験を積んでいるC氏を紹介する。
1)C氏の経歴
18歳〜 学生時代に会計同好会のリーダー経験学生時代は会計系の同好会のリーダーを経験していたとのこと。同好会の活動に加え、学園祭運営機関に参加しながらボランティア的なことにも参加していたらしい。
22歳〜 会計事務所に入所
学校を卒業し、都内の小さな会計事務所に入所。税理士、会計士としての実務を4年ほど経験したと聞いている。
26歳〜 外資系コンサルティング会社に入社
アクティブさを売りにしていたC氏にとっては、会計士としての仕事よりも経営者管理者に変革の視点で物申せるコンサルタントとしての仕事のほうが性にあっていたらしい。会計士仲間の伝をつたって、外資会計事務所系のコンサルティング会社に入社した。
当時、このコンサルティング会社は100人弱の陣容であったが、思ったこと、正しいと思ったことはズバズバ口にする性質と、持ち前の行動力と明るさで、どんどんクライアントを獲得していった。会計士としての実務経験を十分に活かし、外資系メーカー向けの原価管理の仕組みや営業管理制度導入、また、海外の会計パッケージを活用した会計システム導入なども他よりいち早く着手し、部下をどんどん育成しながら、組織を構築し、マネジャー、ディレクター、パートナーとどんどんキャリアを伸ばしていった。できる人、できない人を分け隔てなく大切にできる余裕のあるところもC氏の人格的にいいところであり、のちのちまでファンを増やしていくことになる。
42歳〜 国内系のIT企業に転職
所属していた外資系コンサルティング会社の経営陣の入れ替えのタイミングで、上場している国内系の歴史あるIT企業に転職。このIT企業において、ディレクターとしてコンサルティング事業の立上げに着手した。古い歴史のある国内系IT企業において、このズケズケ正論を言うこのC氏は相当の異端児として扱われ、スムーズに社内の協力を得られなかったり、煙たがられたり、かなり苦労の連続だったとおもわれるが、コツコツと顧客を開拓し、大口の会計システム導入プロジェクトを受託し、自らプロマネとして乗り込みながら社員を育成し、徐々に自分の組織を大きくしていった。
45歳〜 国内系IT企業のコンサルティング子会社の社長
ズケズケ正論を言いながらも組織をどんどん大きくしていけるその能力は当然社長の目にも留まることになる。C氏は本体の役員になると同時に、本社100%出資のコンサルティング子会社を立ち上げてもらい、その社長となった。この自由にできるコンサルティング会社のインフラを活用して、中国とベトナムにオフショア会社を設立。両子会社の社長も兼任しながらグローバルビジネスの立ち上げを始めた。当初、生産性と品質が思いのほか上がらず、両オフショアビジネスも撤退の憂き目に遭いそうになったが、粘り強く、持ち前の明るさで、人材のコアを作りながらなんとかそれぞれの規模を維持しながらなんとか安定させてきている。
50歳〜 国内系IT企業の副社長になる
本体のIT企業が大規模なM&Aをするにあたり、持っていたコンサルティング会社も本体に統合吸収し、本社の副社長となった。現在は社長の右腕、次期社長候補として、本体M&A統合のリーダーシップを取っている。「顧客の経営ニーズに対し十分に理解した提案ができないとだめだ」「国内のみで対応するIT産業は終わり。顧客のグローバル化に対応できないとだめだ」といった持ち前の視点は、この大手国内系IT企業をより良い方向へと導くことと思われる。約10年以上の間、この企業でのさまざまな困難に対して発揮してきたリーダーシップは、さまざまないい人間関係を構築することとなり、指導力を活かした楽しい仲間とすすめる継続的な変革リーダーシップはC氏のライフワークとしてまだまだ続いていくと思われる。
2)彼のキャリアから学ぶべきもの
A)粘り強いチャレンジ精神国内系IT企業に移ったときは。その文化の違いにめげそうになったこともあったかもしれないが、逃げ出すことなく、自分の城「コンサルティング会社」を作り上げるまでチャレンジを続しけたこと、また自分の城ができても、次の目標である「顧客の経営ニーズに対し十分に理解した提案ができる組織になる」「国内のみで対応するIT産業は終わり。顧客のグローバル化に対応できる組織になる」といった自分の持ち前の視点で組織の成長の道筋をつけられる点である。文化の違いでもし転職の当初にいったん逃げたら、もう一生、同様にある意味“普通の日本企業”に戻ることは無かっただろう。また、外資会計パッケージのいち早い導入など、あたらしい技術導入も滞りなく行うなどチャレンジをし続ける性質と、それを許す環境にいたこともC氏のキャリアを前向きに進める原因になったことは間違いない。
B)顧客獲得能力と社員養成能力
ズバズバ口にする性質と、持ち前の行動力と明るさが、クライアント・顧客から見てC氏を忘れられない存在としてきたことが、C氏の人生に対し大きくプラスに働いていると思われる。また、できる社員できない社員分け隔てなく付き合い、新しい技術導入を貪欲に進めるなど、C氏の周りは「新しいことにチャレンジする」雰囲気に満ちていたことは確かだ。この雰囲気により、少なからず多くの優秀な部下でありメンバーが育っていったと思われる。ありきたりになるが、やはり「どんどん顧客開拓でき、いい仲間がどんどん育つ環境」を構築できるリーダーはどんなところでも必ず自由に楽しく仕事ができることになると考察できる。
今回の失敗事例を簡単にまとめると、この図のようになる。

前々回から、「第2部 実録!経営幹部行きキャリア 成功と失敗のケーススタディ」ということで、私が今まで会ってきたさまざまな人々の事例を参考にさまざまなキャリアを紹介している。今回は、企業の中で楽しく挑戦的な仕事をしているキャリアの事例とともに、なぜうまくいっているのか考察したが、次回は反対に企業の中で、また企業を転々としながらどんどんキャリアを落としていった人の事例を紹介する。
*注:なお、各人のプライバシーを守るため、これらキャリア事例は似たキャリアを持つ複数人のものをベースに典型的なケースモデルに再編集しているのであしからずご理解いただきたい。
ミニテスト2−3
第一問:C氏が成功した理由はなぜか?2つ挙げよ。第二問:C氏の国内IT会社におけるそれまでのチャレンジを2つあげよ。これからのチャレンジを2つ挙げよ。
第三問:事業を起こせるリーダーに必要なスキルは何か?2つ挙げよ。
前回(連載第2部第2回のミニテストと模範解答)
第一問:B氏が短期で獲得できた、一生普遍的に活かす事のできる能力は何か?
A1:
理系の緻密で数字に強いセンスと、地道さ、そして営業時代に培ったコミュニケーションスキル、小さなコンサルファームで得られたコンサルタントとしての基礎能力とプロジェクトマネジメント能力
第二問:B氏の新しいコンサルティングビジネスがうまくいかなかった理由はなぜか?
A2:
「自分が将来どのようになりたいのか?」に関するビジョンが定かでないまま、次のキャリアに転職してしまったから。もしコンサルティングビジネスを立ち上げるならコンサルティングビジネスの立ち上げ経験が必要だったと思われる。
第三問:「起業後、どんどん積み上がっていく新しいビジネスモデル」を構築するのに必要な能力要件を3つ述べよ。
A3:
高いキャリア目標と信念
「1.世の中の普遍的に存在する課題を把握して、課題解決できる今まで無かったなんらかの新しいサービスを参入障壁とともに開発する」か、「2.大きな顧客の経営陣に深くアクセスして顧客シェアと産業シェアをあげていく」か、「3.圧倒的な規模とブランドイメージを短期的に構築できる資本力を持つ」ような、「起業後、どんどん積み上がっていく新しいビジネスモデル」を構築できる力
*注:テスト問題の性質上、回答案は著者の視点からの回答案の一つであり、すべての答えを網羅的にカバーしているとは限りません。
松川 孝一
早稲田大学ビジネススクール客員教授
株式会社大洋システムテクノロジー 取締役 専務執行役員
コンサルティング事業「ハイブライド」マネージングパートナー
東京工業大学工学部生産機械工学科卒業。
プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社入社。PwCコンサルティング株式会社 執行役員 パートナー、アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティングサービス株式会社 執行役員 パートナー 公益事業部長を経て現職。
また現職のかたわら、早稲田大学ビジネススクール客員教授としてIT戦略マネジメントの授業、学習院マネジメントスクール顧問・講師としてABC/ABMの授業を受け持つ。
主著に「図解ABC/ABM(第二版)」東洋経済新報社、共著に「MOT」入門日本能率協会マネジメントセンターなどがある。最近は日本一の経営者(の右腕)輩出企業の創造を目指して尽力中。ここまでの約8年間の間、月に10人以上、様々な会社のプロフェッショナル職のキャリア相談を受けている。
大洋システムテクノロジー:http://www.taiyo-st.co.jp/
ビジネスコンサルタント集団「HYBIRDE(ハイブライド)http://www.hybride.jp/」では、コンサルタントを積極採用しています。詳しくはハイブライドの求人情報から

