
連載:牧田幸裕氏に聞く その3「やりたい仕事かどうかわからない」
今回の質問(中堅SIer勤務 29歳)
中堅SIで勤めて3年になります。転職したいけど、会社のホームページをみても業務内容がよくわからない。本当にやりたい仕事ができるか不安になるので転職できないでいます。どうやって、自分のやりたい仕事かどうか見極めればいいのか?

そもそもご自身の「やりたい仕事」は何なのか明確になっているのでしょうか。自分のやりたいことが明確でないがゆえに、会社のホームページで業務内容を見ても、自分のやりたいこととフィットするかどうかわからないのではないでしょうか。
また、ご自身の「やりたい仕事」の中で、ご自身のスキルは競争力があるものなのでしょうか。希少なスキルと言えるのでしょうか。多くの転職希望者は、自身のスキルの競争力を勘案することなく、単に転職を希望しています。しかし、これでは転職はまず上手くいきません。なぜならば、買い手である企業が欲しいと思わないからです。
買い手である企業は、求める要件に合う転職希望者が数多いる中で、より魅力的な人材、より希少なスキルを持った人材を採用します。売り手である自分が「やりたい」(=自分のスキルを売りたい)と思っても、買い手である企業が欲しくない、いらないと思えば、その売買(転職)は叶わないわけです。
この売り手(転職希望者)の認識のミスマッチを解消するには、自分の「やりたいこと(好きなこと)」と「できること(得意なこと)」を分けて考えるべきです。
私はかつて外資系の戦略コンサルタントとして、自分の戦略コンサルティングスキルを所属していた組織に売ってきました。そしてその対価として、報酬を得ていました。
私は戦略コンサルティングも得意でしたが、戦略コンサルティングというサービスを売ることや戦略コンサルティングというサービスのプロモーションが更に得意だったので、外資系コンサルティング会社の役員として、クライアントにコンサルティングの提案をしたり、講演会やセミナーで講演を行い、多くのクライアントを獲得してきました。
しかし、戦略コンサルティングや案件獲得が、「好き=自分のやりたいこと」だったかというと、決してそうではありません。
そもそも私は人前で話をするのは、それほど好きな方ではありませんし、リーダーシップをとってプロジェクトマネジメントをすることも得意ではありますが、それほど好きではありません。
好きなことは、ひとりで本を読み、自分の興味関心があることを研究をすることです。したがって、戦略コンサルタントだった時代は、私は「それほど好きではない、だが得意なこと」を仕事にしてきたわけです。幸い現在は、アカデミズムの世界へ転身し、その多くの時間を自分の好きなこと=やりたいことである研究に、費やすことができています。
しかし、アカデミズムへの転身も戦略コンサルタント時代のコンサルティングの経験があったからこそなしえたことであり、好きだろうが嫌いだろうが、得意なことで付加価値を市場へ提供していくことが必要となります。
このように、「やりたいこと」と「できること」を明確にすることで、今自分が世の中に(そんなに大きく考えなくても自分の会社に、自分が所属している部門に)提供できる価値がわかります。今提供できる価値を明らかにした上で、「やりたいこと」を実現するにはどうすればよいか考えれば、目の前にある転職のチャンスが、自分のやりたいことにつながるかどうか、わかるはずです。
![]() | 牧田 幸裕(まきた ゆきひろ) 京都大学経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科修了。 信州大学 経営大学院 准教授(MBA) アクセンチュア、ICGなど外資系コンサルティング会社のディレクター、 ヴァイスプレジデントを経て、IBMビジネスコンサルティングへ移籍。 インダストリアル事業本部クライアント・パートナーに就任。 2006年より信州大学 経営大学院 助教授。2007年より現職。 製造業(エレクトロニクス・自動車・一般消費財)、流通小売業、官公庁、 学校法人、商社、エンターテイメント、通信業、製薬業など幅広い産業を対象に、2020年ビジョン策定、事業競争戦略策定、新規事業戦略策定、法人営業改革などの戦略策定及び実行支援を手掛けてきた。 |


