「30歳までに経営幹部になれるキャリアの作り方」バックナンバー

30歳までに経営幹部になれるキャリアの作り方

第2部第2回:コンサル起業家B氏の行き詰まりキャリアを考える

実録!経営幹部行きキャリア 成功と失敗のケーススタディ

今まで、「第1部 経営幹部を目指す人のキャリア設計の考え方」という形で進んできたが、今回からは、第2部として「実録!経営幹部行きキャリア 成功と失敗のケーススタディ」と題し、私が今まで会ってきたさまざまな人々の事例を参考に、そのキャリアにおける成功と失敗の理由について考察したい。
なお、各人のプライバシーを守るため、これらキャリア事例は似たキャリアを持つ複数人のものをベースに典型的なケースモデルに再編集しているのであしからずご理解いただきたい。

第1回では、輝かしい成功のキャリア体験を持つコンサルタント出身者であるA氏を紹介した。今回第2回は、同様に自ら起業したがなかなか成長させることのできなかった起業家の事例とともに、なぜうまくいかなかったのか考察する。

1)B氏の経歴

18歳〜 学生時代にスポーツ同好会のリーダー経験
 地方私立大学の工学部でシステムを専攻。学生時代は体育会のサブキャプテンを経験していたとのこと。まじめで、素直で、しかしリーダーシップも取れる優秀な人材であったようだ。

22歳〜 中堅システム会社の営業部門に入社
 学校を卒業し、学校の推薦で都内の中堅システム販売会社に入社。体育会系の彼の性質が見込まれて、営業部隊に配属された。理系出身で自社製品システムに対する理解も早く、地道に粘り強く顧客に対応できるので社内の成績はかなりいいほうだったらしい。

25歳〜 国内の小さなコンサルティング会社に転職
営業経験3年目になり、システム営業の経験が身につき、このまま一生システム営業で行くべきか迷っていたところに、一緒の顧客に従事していた、小さな流通産業向けコンサルティング会社の役員に出会うことになる。B氏の能力が買われて、このコンサルティング会社に入社、コンサルタントとしてのキャリアを始めることになる。

27歳〜 流通系コンサルタントとしてキャリアを推進
国内系の小さなコンサルティング会社では、流通業の物流に特化した調査とレポーティングから経験を積み、やはり、理系の緻密で数字に強いセンスと、地道さ、そして営業時代に培ったコミュニケーションスキルを活かして、入社2年目から小さなプロジェクトワークをいくつか任されることになった。

28歳〜 外資系コンサルティング会社に転職
 流通系コンサルタントとして小さなプロジェクトをこなせるようになり、またまた「このままでいいのか?」と悩みだしたところに、コンサルティング業界に詳しい人材紹介サービスに出会うことになり、より高給が取れて、よりキャリアの幅が狙える大手の外資系コンサルティング会社に、給料UPして採用された。持ち前の理系センス、システム、コツコツ、コミュニケーションそしてコンサルタントとしての基礎能力を持っているB氏はこの会社でも順調にプロジェクトをこなして、程なくマネジャーにキャリアアップした。

35歳〜 自分でコンサルティング会社を設立
 着々とコンサルタントとしての経験も積み上げてきた、B氏はそのときのコンサルティング仲間の独立を期に、自らコンサルティング会社を立ち上げることになる。持ち前の営業力を活かし、過去に付き合った顧客を回りながらよろずコンサルティングの仕事を受注してはこなす日々がスタートした。
 開業2年目には3人の部下を持つに至ったが、自転車操業的に短期間のコンサルティングの仕事を回す中では、業績に山と谷が訪れ、社員のリストラに遅れた結果、借金する羽目になり、最終的には自分ひとりで、他のフリー(自営)のコンサルタントと組みながら仕事をする形態に落ち着いたことになる。
 なんらかの新しいサービスを開発するか、大きな顧客の経営陣に深くアクセスして、どんどん積み上がっていく新しいビジネスモデルを模索するかと将来性について悩みながら、過去のどちらの成功体験も無いB氏はそのままのビジネスを継続せざるを得ず、新しいビジネスを模索しながらキャリアを消費していくことになる。

40歳〜 次のキャリアを模索中
 5年間の個人事業主としてのコンサルティング会社運営も拡大していく先が見えず、しかしながら、ほどほどの報酬を得ながらの自転車操業的コンサルタント人生に疑問を感じつつ、いまさら報酬を下げてまで、過去の部下がリードするコンサルティング会社にも戻れずじまいの状態。仲間はたくさんいるとはいえ、実質上の企業としては一人でのビジネス維持はさらなる寂しさが募ることになる。やはり新しいビジネスの模索を続けるしかないのだろうか。

2)彼のキャリアから学ぶべきもの

A)基礎能力の習得が早い。特にシステム営業と小さなコンサルティング会社での経験
 理系でシステム営業経験が持ったB氏が、さらに小さなコンサルティング会社でコンサルタントとしての基礎能力を積むまでのキャリアは運もあるが、すばらしい転進であり、キャリア全てがいい方向に積み上がってきたと言える。

B)すぐ次のキャリアに移って(転職して)しまう癖
 若い頃の「いい転職」が彼の前半キャリアアップを促進しているのは確かである。しかしながら、後半キャリアにおいて「自分が将来どのようになりたいのか?」に関するビジョンが明確でないまま、次のキャリアに転職しているきらいがある。
もし「自分でコンサルティング事業(企業)を立ち上げる」ことを目標があったなら、国内系の小さなコンサルティング会社で自由なうちに、「自分でコンサルティング事業(企業)を立ち上げる」トライ&エラーを繰り返し、十分な経験を積んで、そのまま独立を狙ったほうが良かったかもしれない。
もし、たとえば、「外資系コンサルティング会社でパートナー(共同経営者)を目指す」ということなら、急いで自分の会社など立ち上げずに、じっくり腰をすえてキャリアを積むべきだったのではないか。

C)自分でコンサルティング事業(企業)を立ち上げる力が無い
 先にも少し述べたが、「?世の中の普遍的に存在する課題を把握して、課題解決できる今まで無かったなんらかの新しいサービスを参入障壁とともに開発する」か、「?大きな顧客の経営陣に深くアクセスして顧客シェアと産業シェアをあげていく」か、「?圧倒的な規模とブランドイメージを短期的に構築できる資本力を持つ」ような、「起業後、どんどん積み上がっていく新しいビジネスモデル」を構築できる力に自信を持てない限り、長期的にコンサルティング事業(企業)を立ち上げ、拡大させながら維持することは難しいと考察する。もし、B氏がまだ、「できれば自分のビジネスを立ち上げたい」と思っているのであれば、上記?〜?の自分なりの確実な策を手に入れることのできる環境に早いうち手遅れになる前に移ったほうがいいかもしれない。

今回の失敗事例を簡単にまとめると、この図のようになる。



 前回から、「第2部 実録!経営幹部行きキャリア 成功と失敗のケーススタディ」ということで、私が今まで会ってきたさまざまな人々の事例を参考に、起業家としてある意味もっとも成功した事例を前回、と失敗しているキャリアパターンの事例を今回紹介した。次回は、企業の中で楽しく挑戦的な仕事をしているキャリアの事例とともに、なぜうまくいっているのか考察する。

*注:なお、各人のプライバシーを守るため、これらキャリア事例は似たキャリアを持つ複数人のものをベースに典型的なケースモデルに再編集しているのであしからずご理解いただきたい。

ミニテスト2−2


第一問:B氏が短期で獲得できた、一生普遍的に活かす事のできる能力は何か?
第二問:B氏の新しいコンサルティングビジネスがうまくいかなかった理由はなぜか?
第三問:「起業後、どんどん積み上がっていく新しいビジネスモデル」を構築するのに必要な能力要件を3つ述べよ。

前回(連載第2部第1回のミニテストと模範解答)
第一問:A氏が成功した理由はなぜか?

A1:
A)高いキャリア目標と信念
B)リーダーシップ力
C)コミュニケーション=人間関係構築力
D)ソリューション開発力

第二問:A氏の今後の課題は何か?

A2:E)跡継ぎ育成力

第三問:第一問の理由の中で、彼の経験のすべてに寄与した最も大きな要因はどれか?また、それはなぜか?

A3:A)高いキャリア目標と信念
学生のときから言っている「30歳代で10億の資産を持ちたい」という明確な目標である。この目標が明確でかつ、ぶれていなかったからこそ、成功と失敗すべての経験をプラスに転じながら自分のキャリアの糧にできた。大学時代から彼の行動の目線と行動指針は決して「普通の大学生」や「普通の会社員」ではなく、明らかに「10億の資産を持つ経営者」のそれであった。

*注:テスト問題の性質上、回答案は著者の視点からの回答案の一つであり、すべての答えを網羅的にカバーしているとは限りません。

 松川 孝一
 早稲田大学ビジネススクール客員教授
 株式会社大洋システムテクノロジー 取締役 専務執行役員
 コンサルティング事業「ハイブライド」マネージングパートナー



東京工業大学工学部生産機械工学科卒業。
プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社入社。PwCコンサルティング株式会社 執行役員 パートナー、アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティングサービス株式会社 執行役員 パートナー 公益事業部長を経て現職。
また現職のかたわら、早稲田大学ビジネススクール客員教授としてIT戦略マネジメントの授業、学習院マネジメントスクール顧問・講師としてABC/ABMの授業を受け持つ。
主著に「図解ABC/ABM(第二版)」東洋経済新報社、共著に「MOT」入門日本能率協会マネジメントセンターなどがある。最近は日本一の経営者(の右腕)輩出企業の創造を目指して尽力中。ここまでの約8年間の間、月に10人以上、様々な会社のプロフェッショナル職のキャリア相談を受けている。
大洋システムテクノロジー:http://www.taiyo-st.co.jp/
ビジネスコンサルタント集団「HYBIRDE(ハイブライド)http://www.hybride.jp/」では、コンサルタントを積極採用しています。詳しくはハイブライドの求人情報から

2008-10-01 13:53:12
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