「30歳までに経営幹部になれるキャリアの作り方」バックナンバー

30歳までに経営幹部になれるキャリアの作り方

第11回「どうやって経営幹部に近づくか?キャリアシミュレーション〜プロフェッショナル型キャリア 続き(その2)」

第一回では、『自分の人生の選択は自分の頭でよくよく考えて、自分で決めること』、そして第二回では、『リタイア直前の状態とリタイア直後の状態が、能力的かつ、経済的に、自分の希望とマッチしていてこそ「安定したいい余生」が保証されているといえるのではないか?』といった話をした。

また第三回、第四回、第五回では7つのキャリア目標パターンを紹介するとともに、悠々自適を目指すなら「経営幹部」か「経営幹部」を雇う人を狙うべきであるという話をした。

第六回から第九回はキャリアマップを元に悠々自適へのキャリアプランについて述べている。前回までは大企業、中小企業、プロフェッショナル職を選んだ場合のキャリア特性について述べた。今回は、第十回に続けてプロフェッショナル職を選んだ場合のキャリアをより具体的にシミュレーションしてみることにする。

プロフェッショナル職の最速確実キャリアパスの例




各キャリアステップのミッションと卒業条件、落とし穴


6.SE・コンサル部長
◆ミッション:
固定的な組織(チーム)を複数傘下に持ち、ミッションとビジョンを持ち、それに共感するメンバーを調達育成し、マーケティング、営業を実施し顧客を調達することまではチームリーダーと変わりないが、違う点は、傘下にリーダーを持つ(=リーダーを育成する必要がある)という点である。プロジェクトに張りつきながら部長をする人もいるし、チームリーダー、メンバーの採用育成、営業活動に専念すべく、プロジェクトに入らない部長も存在する。会社の状況を正しく理解し、要求される必要な財務予算・予測・実績に関する報告をメンバーやチームリーダーに正しく実行させる、また、教育やノウハウのシェアなど会社全社に対する貢献も併せて実行させること。新しいチームを次々と作り出すためには、顧客やサービスを次々と開発し続ける必要がある。これらの投資を含めた計画を行い、経営の意思決定を促す必要があるし、また成長が止まったサービスの整理を進めることも必要となる。
◆卒業条件:
ビジネスを成長させ、顧客と部下の集まり((株)大洋システムテクノロジーでは50人以上、ないしは1年以内に50人以上に成長することが計画されていることが目安)が安定的に存在し、下に複数のチームリーダーが育成され、継続的にビジネスが成長(20%以上が目安)することが計画されていること。また、新しい投資計画を立案し、経営に意思決定させ、事業を起こす経験を複数積むこと。

◆落とし穴:
持っている事業を成長させることが何より必要だが、それまでの小さな組織の成長維持と違って、プロフェッショナルビジネスの部長以上になると言うことは、採用、育成、営業、スタッフケアの全ての面において模範的アウトプットを示せる能力がある必要がある。更に、新しい事業の企画創出など、一気に経営幹部の一員としての全方位的能力を求められることになる。この立場になって「XXが苦手」だの「XXが好き」だの求められていることに対して選り好みしているようでは、これ以上のキャリアは望めない。キャリアの目標がある程度の規模の組織の、経営者や経営幹部を望むのであれば、そこには思い通りで無い課題が多々存在することは間違いない。これらの課題を素早く片付け、思い通りに自動運転されている状況に自分の組織と人材を持っていくことができれば、次の事業部長キャリアを手に入れたも同然である。

7.SE・コンサル事業部長・執行役員
◆ミッション:
固定的な組織(部)を複数傘下に持ち、ミッションとビジョンを持ち、それに共感するメンバーを調達育成し、マーケティング、営業を実施し顧客を調達することまでは部長・チームリーダーと変わりない。組織の規模も50人〜100人を超え、更なる成長を促し、部長から事業部長を育成することなど、更なる規模の大きな仕事を進めることになる。また、この規模になると、秘書や事業部単位の間接サービスも併せて持つことになる場合も多い。執行役員になると、取締役会から、経営執行の役割を任されることになるが、単なる事業部長と違う点は、自分の事業執行に加え、全社的な課題解決の任を担うことが多いということだ。SOX法導入や、セキュリティ強化、全社的なマーケティングの仕組み導入、など全社をまたがったプロジェクト的な課題解決の担当をもたされることになる。この立場になって初めて全社的な経営の視点で事業を運営することになり、晴れて経営幹部の一員となったと言えるだろう。大洋システムでは6名の執行役員がいる中で、35歳以下の執行役員が現在2名いる。

◆卒業条件:
自分の組織の成長よりも、全社・グループ全体の価値向上と最適化にプライオリティを持って考えられる人間になること。取締役についてまわる各種リスクとリターンを正しく認識して、受け入れることができること。株主総会で取締役として、任命を受けることに恥じない経験と高い目標に対しコミットできること。

◆落とし穴:
自分の持つ事業のことのみならず、他の事業も含めた全社的視点で意思決定をするように心がける必要がある。部長に比べ、圧倒的に広い視点で自分の事業の成長と全社の成長を推進できることが、事業部長・執行役員に求められる能力である。しかしながら、圧倒的な営業力や採用力、サービス開発力のパワーのみでたどり着けるのもこのキャリアまでだ。次の取締役になるには、あくまでも全社的な視点、限られた資源の最適配分の視点が必要となる。会社の限られた資源(資金・人材など)を配分されて、最大限のアウトプットを出すミッションは事業部長までとなる。ということで資源配分するのが取締役、資源配分されるのが事業部長と考えると違いがわかりやすいかもしれない。

8.関連会社立上げ・独立新会社立ち上げ
◆ミッション:
自分の事業の延長線上で関連会社や関連事業を立ち上げることもあるだろう。自分の事業から開発やコンサルの仕事を外注に出す場合、ある外注先企業に資本を入れてその外注先企業の役員を兼任したり、自分の事業の強みを活かして、他社の強みとシナジーを起こす目的でジョイントベンチャーを立ち上げたり、など、さまざまなシナリオが考えられる。
たとえば、大洋システムでは、2008年4月に中国科学院と共同で、北京の日本のシステムをオフショア受託する会社を共同出資立ち上げたが、その副董事長(副社長)に、大洋の常務取締役がコンサルティングの事業部長(ブランド名:ハイブライド)兼任で就任し、新規事業の立上げにまい進中である。
また同様に2008年8月より、自社で開発した介護ソフトウエアを活用しコールセンターサービスを実施する上場企業と共同で、介護事業者向けのASPサービスを開始することになっているが、この事業はもう一人の常務がリーダーシップを取って推進している。
このように、関連会社や関連事業を立ち上げたら、その会社の経営者として、ストックオプションを発行してもらったり、また株式を取得したりして、その会社のオーナーになっていくこともひとつの方向性になる。また、出来上がった十分に安定化した関連会社を、部下に任せて、本体の取締役や社長として本体の役員に戻るのもひとつの選択肢だ。

◆落とし穴:
十分な営業能力、採用・育成能力、など組織を大きくし、維持する基礎的能力が足りないまま、関連会社を立ち上げても、そのビジネスの規模は、その経営者の能力に依存するので、こじんまり成長しない会社を一生面倒見なくてはいけないような袋小路にはまる可能性があるので、十分な事業開発能力を身につけ、勝算を十分に確保してから会社や事業を起こすようにしたい。世の中になかなか成長しないコンサル会社が多いのも、コンサル能力と事業経営能力の違いに気づかないまま、経営者の採用・育成・営業能力を十分に身につける前に独立する人が多かったからかもしれない。

9.取締役、常務・専務・社長
◆ミッション:
取締役とは株主に対し責任を取りながら、会社運営の全てを統括する立場である。取締役はそれ以外の社員と違い、取締役規定に従うことになり、就業規則に縛られることが無い。任期は企業にもよるが、大洋システムでは1年。もちろん失業保険の対象外である。さらに競業規約に縛られており、万が一退職しても競合となりえる会社に就職することはできない。また、経営ミスにより会社に著しい損失を出したら株主代表訴訟にあうリスクがある。ということで、リスクが大きい立場ではあるが、成果を出せば出すほど、ストックオプションや株式の割り当てなどがあり、さらなる大きな権限を持つことになる。その結果企業価値を大きくすればするほど、大きなリターンが期待できることも確かだし、なにより会社を創り、運営し、社会に貢献する喜びが感じられる立場でもある。

◆落とし穴:
取締役のリスクは先に述べたとおり、大きな権限がある反面、商法や会社法、証券取引法などで、その行動に対する責任が規定されている。また上場などするとさらに、株主含む社会的な目の監視下に置かれることになり、なんでも思い通りできなくなるリスクがある。


今回までで、「第1部 経営幹部を目指す人のキャリア設計の考え方」という形で進んできたが、次回からは、「第2部」ということで 「実録!経営幹部行きキャリア 成功と失敗のケーススタディ」ということで、私が今まで会ってきたさまざまな人々の事例を参考に、そのキャリアにおける成功と失敗の理由について考察したい。

ミニテスト11


【ミニテスト11】
第一問:「プロフェッショナルビジネスの部長以上になる」能力条件を簡潔に述べよ。
第二問:「事業部長」と「取締役」の違いを述べよ。
第三問:「関連会社」を起こす際に気をつけなければいけない点は何か?

前回(連載10回)のミニテストと模範解答
第一問:「SE・コンサル見習い」の卒業条件と卒業を早める秘訣を述べよ。

A1:
<卒業条件>
お客様(上司とエンドユーザー)が自分の社内にいるあなた個人を将来的・継続的に指名してきたとき。
<早める秘訣>
与えられた仕事を100%こなすだけでは成長は無い。成果として120%〜200%出すようにがんばると早く卒業できる。自分に仕事を出してくれたお客様にあたる人(上司とエンドユーザー)がなんでこれをしたいのか?どうしたら更に喜ぶのか?助かるのか?十分以上に考え抜くことが100%に加えた+20〜+100%のベースとなることは自明。また他の人に比べて成果が大きい人に対し指名してくるのも自明。

第二問:「SE・コンサル一人前」の卒業条件を述べよ。

A2:社会的使命と差別化要素を明確化した自分にとってのミッションとビジョンが明確にあること。ひとつのまとまった仕事を任せても、自分の能力と部下やパートナー達を使いながら、安定的・確実に期待以上の成果が出せること。

第三問:「SE・コンサルプロマネ」の面白みと落とし穴を述べよ

A3:頭を使って、たとえば、プロジェクトを予定より一月早く終わらせて、残った時間でクライアントと面白く次の準備をするなど、期間とメンバー、アウトプット、損益を自由にコントロールできるのがプロマネ本来の面白さだ。
しかしながら、言われたことをただ無難かつ普通にこなしているだけでは人もついてこないし、次の成長も無い。ましてや無難にこなす能力も無いとすると以前の経験が足りないことも多い。トラブルはどこにでもあって解決するのが当然。

*注:テスト問題の性質上、回答案は著者の視点からの回答案の一つであり、すべての答えを網羅的にカバーしているとは限りません。



 松川 孝一
 早稲田大学ビジネススクール客員教授
 株式会社大洋システムテクノロジー 取締役 専務執行役員
 コンサルティング事業「ハイブライド」マネージングパートナー



東京工業大学工学部生産機械工学科卒業。
プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社入社。PwCコンサルティング株式会社 執行役員 パートナー、アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティングサービス株式会社 執行役員 パートナー 公益事業部長を経て現職。
また現職のかたわら、早稲田大学ビジネススクール客員教授としてIT戦略マネジメントの授業、学習院マネジメントスクール顧問・講師としてABC/ABMの授業を受け持つ。
主著に「図解ABC/ABM(第二版)」東洋経済新報社、共著に「MOT」入門日本能率協会マネジメントセンターなどがある。最近は日本一の経営者(の右腕)輩出企業の創造を目指して尽力中。ここまでの約8年間の間、月に10人以上、様々な会社のプロフェッショナル職のキャリア相談を受けている。
大洋システムテクノロジー:http://www.taiyo-st.co.jp/
ビジネスコンサルタント集団「HYBIRDE(ハイブライド)http://www.hybride.jp/」では、コンサルタントを積極採用しています。詳しくはハイブライドの求人情報から

2008-07-22 12:49:17
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