
第10回「どうやって経営幹部に近づくか?キャリアシミュレーション〜プロフェッショナル型キャリア 続き」
第一回では、『自分の人生の選択は自分の頭でよくよく考えて、自分で決めること』、そして第二回では、『リタイア直前の状態とリタイア直後の状態が、能力的かつ、経済的に、自分の希望とマッチしていてこそ「安定したいい余生」が保証されているといえるのではないか?』といった話をした。また第三回、第四回、第五回では7つのキャリア目標パターンとは悠々自適を目指すなら「経営幹部」か「経営幹部」を雇う人を狙うべきであるという話をした。
第六回からはキャリアマップを元に悠々自適へのキャリアプランについて述べている。前回までは大企業、中小企業、プロフェッショナル職を選んだ場合のキャリア特性について述べた。今回は、続けてプロフェッショナル職を選んだ場合のキャリアをより具体的にシミュレーションしてみることにする。
同じプロフェッショナル職を対象としているので第9回と多少重複するところがある可能性があるがご容赦いただきたい。
プロフェッショナル職の最速確実キャリアパスの例

図に示したのは、(株)大洋システムテクノロジー(ハイブライド)の入社説明などで私が普段説明しているキャリアパスの例である。この会社も経営コンサルタントからエンジニアまで各種のプロフェッショナルを社員として採用育成し、将来、世界・世間のために役立つ革新的なサービスを創造・運営できる人材を創出することを目的とした会社である。
新卒入社当初はシステムエンジニア(SE)やコンサルタントの見習いから始まり、最後は本社の社長になるか独立的に新会社を立ち上げその社長になることをゴールにしたキャリアパスになっている。
このキャリアパスにおいて特徴的なことは、確実かつ最速にキャリアを積めることであり、新しくサービス事業を立ち上げて社長になるために必要な能力を全てそのキャリアの中で積めることにある。
例を挙げれば、
100人の事業部の損益責任を持ったことが無い人が100人の会社の社長にはなれないし、営業経験や採用経験が無い人が事業部長になれることもありえない。
プロジェクトマネジャーもやったことが無い人が組織の長になることもありえない。
ましてやお客様から指名されたことの無く、一人前のプロと認められたことも無いプロフェッショナルがプロマネになることもありえない。
逆に言えば、これらの必要最小限の経験さえ成功体験とともに積んでいければ、確実最速にキャリアを積めるということである。参考までに、各キャリアになれるタイミングを参考として併記している。
もちろん実際のビジネスは、学校とは違って、社会情勢やビジネスの状況、本人の能力と実践によりその成長スピードは人によって変わってくるため、そのタイミング幅をもって記載してある。
下積み期間が人より多少長いからといって嘆くことなど無い。
本人がその気になって自分の違い「戦略と差別化要素」を明確化しておくことが前提ではあるが、一つひとつの積み重ねてきた経験の違いがその人の能力とモチベーションの違いとなり、かならず後になって報われるはずである。
各キャリアステップのミッションと卒業条件、落とし穴
1.SE・コンサル見習い
◆ミッション:
自分が与えられた仕事を最大限がんばってこなすこと。与えられた仕事を100%こなすだけでは成長は無い。成果として120%〜200%出すようにがんばると早く卒業できる。自分に仕事を出してくれたお客様にあたる人(上司とエンドユーザー)がなんでこれをしたいのか?どうしたら更に喜ぶのか?助かるのか?十分以上に考え抜くことが100%に加えた+20〜+100%のベースとなることは自明。また他の人に比べて成果が大きい人に対し指名してくるのも自明。
◆卒業条件:
お客様(上司とエンドユーザー)が自分の社内にいるあなた個人を将来的・継続的に指名してきたとき。
◆落とし穴:
自分で勝手に仕事を終わらせた気分になって、上司やエンドユーザーがハッピーかどうかに対し無頓着でいると、「言われたことだけこなすやつ」というレッテルが貼られ、それ以上の面白くて難しい課題を与えられなくなる。「プロは言われたことだけ100%だけ十分こなせばいい」という考えは、自らのその後の成長を完全に止めてしまう危険性がある。
2.SE・コンサル一人前
◆ミッション:
お客様(上司とエンドユーザー)があなた個人を将来的・継続的に指名してきたら、すかさず、より若い部下を入れてもらうよう交渉すべきである。その部下を育てながら彼・彼女が自分と同じように120%〜200%の仕事を続けながらお客様(上司とエンドユーザー)が更にハッピーになるように進めることだ。
あわせながら、自分の得意としている仕事の社会的意義を具体的に模索することが一人前でいることの必須条件である。自分の得意としている仕事の社会的意義と差別化要素をお客様(上司とエンドユーザー)と話し合い、また同業の仲間や同業の協会、先達の文献や意見など広く求めながら、自分と部下の能力のつけ方の方向性「ミッションとビジョン」を明確に持つ必要がある。
また、自分と部下の仕事くらい自分で外から取ってこれることがプロ一人前の卒業条件である。お客様から指名されるノウハウを持って、また自分の仕事の社会的意義と差別性を明確に説明できれば、今のお客様のご紹介で次の仕事を探し出すことや、新しい営業先を先輩に紹介してもらえばよいだけだ。
◆卒業条件:
社会的使命と差別化要素を明確化した自分にとってのミッションとビジョンが明確にあること。ひとつのまとまった仕事を任せても、自分の能力と部下やパートナー達を使いながら、安定的・確実に期待以上の成果が出せること。
◆落とし穴:
部下であるメンバーがあなたのプロフェッショナル能力に対し一人前で尊敬できると考えられないと、そもそも人間関係が成り立たない。いつでも+20%〜+100%を追求することが必要。また「ミッションとビジョン」が希薄だと「あの人仕事できるけど一緒にやっていても面白くない」といった人間関係になりかねない。仕事を取ってくることつまり営業が人任せだと後になって行き詰ったとき解散の憂き目に会うことが予測されるため早く若いうちに営業(的な)経験を積んだほうが良い。
3.SE・コンサルスペシャリスト
◆ミッション:
一人前の延長で個人的能力を積み、プロとしての価値(対価)を極限まで高めること。「組織の長として生きていくより一人でやっていったほうが気楽で効率的である」と考えるキャリアパス。うまく組織の中で(組織に)使われることで長期的に生き延びることもできる。また、希少価値のある先端的なスキルを持つことで高い報酬を得ることも可能となる。
◆卒業条件:
特に無し、どんどん能力をつけて価値を向上させること。ノーベル賞を取るなど高い目標をセットしたほうが良い。
◆落とし穴:
組織を作る能力が付かないので、あとで大きいことをしようとしてもかなり難しい状況になる可能性が高い。また、スキルが陳腐化したときにはもう一度新しいスキルをつけないと生き残れない。長期的に見ればスキルの自転車操業。
4.SE・コンサルプロマネ
◆ミッション:
自分で仕事(プロジェクト)、メンバーを調達して、プロジェクト損益を管理しながら予定以上のパフォーマンスをより少ない投下資本でがんがん解決するミッション。ミッションとビジョンを明確にしながらプロマネを続けていれば継続的に仕事と部下が固定されていくはず。営業から始まってメンバーの調達育成、プロジェクトの課題・リスクをマネジしながら、最終的な結果をコミットするのが仕事。
◆卒業条件:
社会的使命と差別化要素を明確化したミッションとビジョンが明確にあること。顧客と部下の集まり(大洋では5人以上)が安定的に存在し、継続的にビジネスが成長することが説明できること。
◆落とし穴:
プロマネになっても+20%〜+100%は何であるか徹底的に追及すること。頭を使って、たとえば、プロジェクトを予定より一月早く終わらせて、残った時間でクライアントと楽しく次の準備をするなど、期間とメンバー、アウトプット、損益を自由にコントロールできるのがプロマネ本来の面白さだ。しかしながら、言われたことをただ無難かつ普通にこなしているだけでは人もついてこないし、次の成長も無い。ましてや無難にこなす能力も無いとすると以前の経験が足りないことも多い。トラブルはどこにでもあって解決するのが当然。
5.SE・コンサルチームリーダー
◆ミッション:
固定的な組織(チーム)を持ち、ミッションとビジョンを持ち、それに共感するメンバーを調達育成し、マーケティング、営業を実施し顧客を調達する。自らプロマネしながらプロマネを複数人採用・育成し、さらなるビジネス拡大を進める。会社の中で要求される必要な財務予算・予測・実績に関する報告を正しく実行し、また、教育やノウハウのシェアなど会社全社に対する貢献もあわせて実行すること。
◆卒業条件:
ビジネスを成長させ、顧客と部下の集まり(大洋では25人以上)が安定的に存在し、下に複数のチームリーダーが育成され、継続的にビジネスが成長することが説明できること。
◆落とし穴:
プロマネまでは与えられたプロジェクトを無難にこなせればなんとか様になったが、固定的な組織のリーダーになるとますます、ミッション・ビジョンをベースにしたリーダーシップに加え継続的な、営業力、採用力、また数値・業務・事務の管理能力を求められることになる。これらの経験をここまで満足にやってこないまま、チームリーダーになると、いきなり頓挫する可能性がある。また結果が継続的に出ないと、組織のリーダーをはずされることになる。チームリーダーからは管理職なので、本当に自分に必要な能力を十分つけてから受けたほうがいい。
今回はチームリーダーまでの最速確実なキャリアの例を説明したが、次回は部長〜社長までのキャリアを説明する。
ミニテスト10
【ミニテスト10】
第一問:「SE・コンサル見習い」の卒業条件と卒業を早める秘訣を述べよ。
第二問:「SE・コンサル一人前」の卒業条件を述べよ。
第三問:「SE・コンサルプロマネ」の面白みと落とし穴を述べよ
前回(連載9回)のミニテストと模範解答
第一問:
プロフェッショナルの定義を述べよ。
A1:プロフェッショナルとは、会社などの組織やブランドではなく、個人の能力のみでサービス(や製品)を提供し、直接顧客から対価をもらう職業のことである。プロであればあるほど、どのような環境でも通用する力を持っている。逆に、確立されたブランドの元であったり、整備された組織や環境、上司などの下でしか仕事のできないスキルワーカーはここでは、「プロフェッショナル」と言うよりは「社員」と定義する。
第二問:
プロフェッショナルとして一人前になったと認識できる出来事はなにか?
A2:クライアント(顧客)から個人的に指名され、組織を離れても、それだけで自分の分は最低限まかなえるのが一人前の条件。個人的に指名されなければそもそも話しにならないし、自分の力で組織を食わせているならまだしも、組織に食わせてもらっている間は一人前のプロとはいえないだろう。
第三問:
「専門性を積むこと」と「プロ組織をマネジメントすること」が相反することなく、相乗効果を発揮することがありえるのはなぜか?
A3:プロ(又は見習い中)の後輩がたくさんいればいるほど、一人でやっているケースより、後輩の経験を同時に積める分、専門性がより付くというロジックである。後輩の仕事の手直しや育成をしている間に専門性はどんどん効率的につむことができるとも言える。
*注:テスト問題の性質上、回答案は著者の視点からの回答案の一つであり、すべての答えを網羅的にカバーしているとは限りません。
松川 孝一
早稲田大学ビジネススクール客員教授
株式会社大洋システムテクノロジー 取締役 専務執行役員
コンサルティング事業「ハイブライド」マネージングパートナー
東京工業大学工学部生産機械工学科卒業。
プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社入社。PwCコンサルティング株式会社 執行役員 パートナー、アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティングサービス株式会社 執行役員 パートナー 公益事業部長を経て現職。
また現職のかたわら、早稲田大学ビジネススクール客員教授としてIT戦略マネジメントの授業、学習院マネジメントスクール顧問・講師としてABC/ABMの授業を受け持つ。
主著に「図解ABC/ABM(第二版)」東洋経済新報社、共著に「MOT」入門日本能率協会マネジメントセンターなどがある。最近は日本一の経営者(の右腕)輩出企業の創造を目指して尽力中。ここまでの約8年間の間、月に10人以上、様々な会社のプロフェッショナル職のキャリア相談を受けている。
大洋システムテクノロジー:http://www.taiyo-st.co.jp/
ビジネスコンサルタント集団「HYBIRDE(ハイブライド)http://www.hybride.jp/」では、コンサルタントを積極採用しています。詳しくはハイブライドの求人情報から

