「30歳までに経営幹部になれるキャリアの作り方」バックナンバー

30歳までに経営幹部になれるキャリアの作り方

第4回:リタイア時のキャリア希望パターンと、その後の選択肢 2of2

第一回では、『自分の人生の選択は自分の頭でよくよく考えて、自分で決めること』、そして第二回では、『リタイア直前の状態とリタイア直後の状態が、能力的かつ、経済的に、自分の希望とマッチしていてこそ「安定したいい余生」が保証されているといえるのではないか?』といった話をした。

また第三回ではリタイア直前のキャリア構築を「企業内」で遂行することを目標としている人たちの、3つのキャリア目標パターンの話を整理してきた。今回は既存の会社に依存しない、残りの4つのキャリア目標パターンに付き、解説する。

1)オーナー経営者として会社を経営している、乃至はオーナー(投資家)の状態まで行きたいパターン


 「いづれ自分の会社を持ちたい」と考えているタイプ。何か世の中のためになる何かテーマを持っていてそれを実現したいためであったり、ただ自分の能力を試したいためであったり。少し野心家のケースだが、このキャリア目標を持っている人たちもかなり多い。

先に述べた企業経営者と、オーナー経営者の違いは大株主かどうか?ということ。いやな言い方をすれば、大株主でない企業経営者は、結局大株主に雇われている経営者(いわゆる雇われ経営者)であるとも言えるわけである。ご存知のとおり、株主総会で取締役の選任決議にて選任されずに、社長が首になるケースは珍しくない。

 そういう意味で、オーナー経営者には、すべて、自分の会社が自分の持ち物であるからゆえやりたいことをやりたいだけ思いっきりできる大きなメリットがある。

また、儲かった分は、社員に必要な分だけ分配すれば、残りはすべて自分の財産である。さらに将来性をどんどん確保することで、企業価値を高めていき、上場し、権利を一部でも売却すれば、億万長者になれる可能性も少なくない。

ここまで出来るオーナー経営者なら、マスコミも黙っていないし、講演、執筆で大忙しだ。リタイア後のキャリアは大学教授、さらなる投資、社会貢献など、やりたいこと選び放題だろう。もちろん「成功したら」の話である。

 オーナー経営者は殆どの場合、殆ど自分自身でゼロから立上げないと、先に立ち上げているオーナーの下につくことになり、すなわちオーナーとしての意味(価値=持株比率)がその分、目減りする(=雇われ度が高まる)ことになる。

また、ゼロから立ち上げて、大成功したオーナー経営者と、そこそこで止まっているオーナー経営者、自腹で損失補填しながら細々続けているオーナー経営者。撤退タイミングを逸して倒産したオーナー経営者などいろいろいるわけで、成功するのはほんの一握りである。このハイリスクハイリターンの特性をよく認識し、どうしたら確実に結果が出せるオーナー経営者になれるのか?は早いうちからよくよく考えたほうがいいかもしれない。

しかしながら、やはり、最後はオーナー経営者で大成功!!社会からも尊敬され、悠々自適でたくさんの仲間と最高の老後。というのが仕事に打ち込む人生を選ぶなら最高の選択であり、リターンかもしれない。

 資産を充分に持っていて、また信用できる経営者と仕組みを見つけることが出来れば、自分が経営する必要など無い。いわゆるオーナー(資本家)として、経営者にがんばってもらうだけでOKだ。

できれば一社のオーナーといわず、何社か持ってリスクを分散しながら自分の資本を守り増やしたいものだ。小さなレベルから、株式投資やワンルームマンションのオーナーなどから始めるのもいいかもしれないが、この小額投資レベルの延長線上で企業オーナーになれるのは殆どありえないだろう。

オーナー経営者を全うし、経営権を継いでオーナーになるパターンが一般的ではないか。

2) 自分個人の能力で仕事を取れ、稼げる、いわゆるプロフェッショナルの枠を極めたいパターン(技術志向とプロフェッショナル組織構築志向の両方含む)


 会計士や弁護士、税理士、医師、看護士、介護士などの士のつく商売はいわゆるプロフェッショナル業だ。

いわゆるエンジニアやコンサルタントも、市場や顧客から継続的に指名されるレベルになれば、プロフェッショナルといってもいいだろう。

 選んだ技能により、その稼ぎは大きく違うのもこのキャリアの特性だ。同じシステムエンジニアでも見習いプログラマーで50万円/月の単価。オブジェクト指向設計が出来て、儲かる製品の設計をリードできるエンジニアは500万円/月以上の単価でもおかしくない。
その差は約10倍である。この一人当たりの単価により、プロフェッショナルの年収は当然左右されることになる。

 単価を高めることによる価値が増大することもさることながら、プロフェッショナルを束ねて、より大きな社会的成果を出し、事業としての価値を高めたいと考える人もプロ志向の人の中に少なからずいるパターンである。

このタイプはプロフェッショナルから(オーナー)経営者への移行を意図としたパターンと言えるが、企業の一般的な会社員から経営者を目指すよりも、生涯賃金の上でも、経営者としての能力開発の観点でも、数段、現実的で近道であると考察できる。

 また、世の中で必要とされている旬の領域について、独自の専門性を持っており、実践をもって語れれば、その教えを乞いたい人たちも出てくる可能性があり、講師や教授への道もありえる話である。

ただし、時代の変化に乗り遅れると大きくその価値が下がるのもこの業の特性だ。旬を見極め能力とビジネスの領域を都度うまいかたちでシフトすることも必要である。

 もちろんプロフェッショナルの世界は、金だけではない。社会的意義を感じて、世の中のためにこの業を全うする人もかなり多い。まだ、技術や技能をとことん追求することもすばらしいキャリアであり人生と考える。

どちらであっても本当のプロフェッショナルはそのリタイア後も良い意味での精神的な「悠々自適」は保証されていると言えるのではないか。

3) 大学教授やそれに準じる教育者になりたいと感じているパターン。


 「人に何かを教えるのが好き」というのはとてもすばらしい志向だと考察できる。

一般的な先生や講師はプロフェッショナル職と考えて差し支えないだろう。頂点を極めるなら大学教授まで目指したいところだ。

しかし、大学教授になるには一般を超えた専門性と独自性を兼ね備えなければならない。助手から始まって、助教授、教授を目指すのは不断の努力が必要でかなり大変な話だ。

また、少子化の影響で学校経営も厳しく、学生を集められない学校や教師はたとえ、その研究成果が優秀であっても安泰ではいられない社会背景がある。

グローバル化と企業法人との研究競争により、専門領域の価値があっという間に陳腐化する可能性もある。
(元)経営者やプロフェッショナル、行政職からの移転組が徐々に幅をきかせだしたのも、より、実効的な教育を求めるマーケットからの要望であろうが、最近の傾向である。

 育てた学生とのつながりや社会性の高さから精神的な「悠々自適」は保証されていると言える幸せな職位だとは思うが、先も述べたように、もし、この領域でそれなりの財産を作ろうと思ったら一般を超えた専門性と独自性を維持、確保しない限り価値は失われるので、その稼ぎの割には大変で厳しいキャリアであるといわざるを得ない。

4) その他


その他、今は決めていない。やりたいことが他にあるため、仕事上のキャリアは生活に困らなければいいので気にしていない。乃至は一般的な枠組みにはまらない仕事をしている場合など。

 人生は多様である。キャリアの目標も多様であるべきで、他人と違うキャリアを志向すればするほど、他人から理解されにくかったり、協力を得にくく、また、前例を踏襲できずに、実際困難に直面する場合も多少あるかもしれないが、その独自キャリアにチャレンジし、先に進んだときの達成感は何にも変えがたいものがあるかもしれない。

他人と違うキャリアを創造できる人が最も『自分の人生の選択は自分の頭でよくよく考えて、自分で決めること』ができている人かもしれない。

図)安定したいい余生の有力な条件(リタイア直前とリタイア後の状態マッチング)



今回は既存の会社に依存しない、4つのキャリア目標パターンにつき解説した。

オーナー社長を狙うか?
それとも雇われ社長で行くか?
また専門性を極めてプロフェッショナルから社長や教授を狙うか?

それぞれの長所短所を説明した。次回はこのそれぞれのキャリア目標パターンにたどり着くための段取りの可能性(=キャリアパスのパターン)について説明する。

まとめ)
リタイア時キャリア目標パターンにより、リタイア後のライフが大きく左右されてしまう。自分がどうなりたいか?よくよく考えた上で、リタイア時のキャリアを設計する必要がある。

ミニテスト4


第一問:オーナー社長で無い社長が「雇われ社長」といわれるのはなぜか?また「雇われ社長」が安泰な立場でないのはなぜか?

第二問:プロフェッショナル職から狙える2つのキャリアアップの方向性は何か?

第三問:大学教授になるために必要不可欠な要素は何か?またどのようなリスクがありえるか?


前回(連載第3回)のミニテストと模範解答
【ミニテスト3】
第一問:望むと望まないとにかかわらず、会社員として役職者にたどりつけないケースは少なくないが、そうなってしまうリスクを高める行動の例をあげよ?

第二問:企業の役職者になって、リタイア後に精神的「悠々自適」が期待できるケースはどんな場合か?

第三問:たとえ、社長であっても、その立場は年に一回評価され、再任されないリスクがある。評価されるタイミングはどのようなタイミングで、誰によって評価されるのか?

【ミニテスト3(回答案)】
第一問:客観的に見て、大したがんばりも無く同じ会社に居座ったり、何かまとまった成果を出す前に転々と転職を繰り返すと、役職者にたどり着けないリスクはさらに大きくなると考えたほうが良い。

第二問:在職中に、自分の考えをしっかり持って、人材育成に勤しむとか、創造性を発揮していい仕事をするとか、自分として「いい仕事をやりきった」感があれば、一緒にがんばった仲間とリタイア後の精神的「悠々自適」を十分満喫することも可能である。

第三問:年に一回の定時株主総会。株主によって評価され、再任されないことも十分ありえる。
*注:テスト問題の性質上、回答案は著者の視点からの回答案の一つであり、すべての答えを網羅的にカバーしているとは限りません。

松川 孝一
シンクログローバル株式会社 代表取締役社長
株式会社日本ピーエスエス 代表取締役社長
早稲田大学商学研究科、早稲田大学ビジネススクール 客員教授
早稲田大学IT活用新ビジネス研究会 副理事長
学習院マネジメントスクール 講師・顧問

東京工業大学工学部生産機械工学科卒業。
プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社入社。PwCコンサルティング株式会社 執行役員 パートナー、アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティングサービス株式会社 執行役員 パートナー 公益事業部長、株式会社大洋システムテクノロジー取締役を経て現職。
また現職のかたわら、早稲田大学ビジネススクール客員教授としてIT戦略マネジメントの授業、学習院マネジメントスクール顧問・講師としてABC/ABM、プロジェクトマネジメントの授業を受け持つ。

主著に「図解ABC/ABM(第二版)」東洋経済新報社、共著に「MOT」入門日本能率協会マネジメントセンターなどがある。
ここまでの約10年間の間、計500人以上の様々な会社におけるのプロフェッショナル職のキャリア相談を受けている。
現在、従来からのコストダウン、シェアアップのコンサルティングに加え、新しい事業コンセプト・事業モデルの開発にチャレンジ中。

http://www.syncgl.com/【シンクログローバル株式会社】
http://www.winb.org【早稲田大学IT活用新ビジネス研究会】

2007-08-21 13:51:05
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