
第2回:安定したいい余生とはなんだろう?−リタイアの前後どうなっていたいか?
将来XXになる!
前回、『自分の人生の選択は自分の頭でよくよく考えて、自分で決めること』とごく当たり前のことを述べたが、これが結構難しいのである。
子供のころは「自分はサッカーの選手になる!」だの「会社の社長になる!」なんて、のんきに言っていたものである。
大人になればなるほど、だんだん言わ(え)なくなる。いつごろから「将来XXになる!」なんて言わなくなってしまうのだろうか?
学歴が決まって、就職が決まって、自分の仕事とキャリアがほぼ決まってしまってくると、「将来XXになる!」なんて言ったって、自分の能力も将来もいつのまにか決まってしまって、発言自体の意味がなくなってしまう状況。
経験を積んで、キャリアが進めば進むほど、自分の将来が決められていって、将来の自由度がいつのまにかなくなってしまうなんて、皮肉なものだ。
「将来XXになる!」の選択肢がなくなった瞬間に、ただただ、きたるべきキャリアと将来を受け入れるしかなくなるのである。
キャリアを持っている多くの人たちに「将来どうなりたいの?」と聞くことがよくある。たいていの人が、答えられない。
なぜなら、「超短期的な仕事をこなすことにはまっていてゆっくり考える時間が無い」であり、また「いまの仕事の延長線以外で自分のキャリアを考えられなくなっていて、選択肢が無いことを直視するのが怖いから」などの理由はさまざまである。
いつリタイアしたいの?
もう少しわかりやすく聞くことがある。
「いつリタイアしたいの?そのときどのようになっていたいの?」
この質問から、たいていの人は頭が働き出す。
リタイアの定義は難しい場合があるが、ここでは、「そこまで溜め込んだキャリアや資産の蓄積をやめて、放出を始める時期」とするとわかりやすいかもしれない。
よくあるパターンとして、「起業して、ある程度の規模にしたら、後を後輩に継いで、リタイア後は海外リゾートで家族とのんびり暮らす」とか、「大学教授になって数多くの優秀な人材を育成し、リタイアして、私塾でもおこして地元に貢献したい」とか。
さっそくご自身の「いつリタイアしたいの?そのときどのようになっていたいの?」を、いますぐ考えてみて欲しい。
リアルであればあるほど具体的であればあるほど、これもごく当たり前のことだが、その将来は達成しやすくなる。
リアルであればあるほど具体的であればあるほど、その将来は達成しやすくなる
筆者は、さまざまなキャリアで働いている人と話をすればするほど、この答えは類型化できると考えている。
リタイアを何時にするかは簡単に類型化できる。40歳台、50歳台、60歳台、70歳代、ずっとリタイアしない。のいづれかである。
30歳台以前にリタイアしたいという猛者にはまだ会った事がない。
リタイアの時期を早く設定すればするほど、現役期間が短くなる分キャリアをスピードアップしなければいけない可能性が高まるわけで、また、余生が長い分だけ蓄積しておかなければならない分が増えるので、ハードルはより高くなるといえよう。
「リタイア直前にどうなっていたいの?」
が最もキャリアの将来を規定する質問であろう。
これも、
「起業したい」、「経営者ないしは経営者の右腕になりたい」、「リーダー又は管理者になりたい」又は、「学校の先生になりたい」か、なにか「特定の能力をつけてプロフェッショナルになりたい」かないしは「学者として特定の技術を極めてノーベル賞をとりたい」までの範囲であろう。
その目的「どうしてそうなりたいの?」の問いに対しては、自分のためか社会のためのいずれか、又は、両方であろう。
リタイア後、やりたいことは、「のんびり悠々自適」か、又は、「なにかやり続けたい」のどちらかであろうし、「なにかやり続けたい」の中身はたいてい、「社会のためになりたい」か「自分か家族のために何かしたい」であろう。
「社会のために」の中身はたいてい「人を育てたい」か「社会的問題の解決」のどちらかである。
リタイア後の人生は、リタイア前の人生で蓄積されたことを発展的に活用する場合も多いが、まったく新しいことをはじめたり、リタイア前に仕事と並列的にやっていた趣味に専念するケースもあるようである。
リタイア後の生きかたこそ、自由にやりたい放題やれる環境創造が、本来あるべきキャリアプランであろうが、これが意外と曲者である。
「のんびり悠々自適」はお金がかかる分、最も贅沢な選択肢かもしれない。
この場合、どのような生活レベルでどのように生きていくのか具体的に設計し予算化しておく必要があるが、例えば30年間の余生を、毎年、海外旅行、国内旅行に行きながら、うまいもの食べて、いい医療や介護を受けながら、悠々自適な暮らしを夫婦でおくるためには、3億円(年間1000万円相当)程度の資産は欲しいところである。
3億円を30年間でためるには論理的に毎年1000万円の資産形成が必要となる。
もちろん、もっと安い「のんびり悠々自適」が実際は現実的かもしれないが、どの程度の人生をおくれるかは、介護保険や健康保険、年金制度、消費税の動向なども予測しながらよく考えたほうがいい。
リタイア後に「学校の先生」など、人を育てる仕事をやりたい人も多いが、希望者が多い分競争も激しく、また、古い考えをただ教えられても、教えられる側は集まってこないので、リタイア後の先生稼業で生活するのは実際のところ、かなり難しいと考えるべきであろう。
やはり「リタイア前のキャリア」がどれだけ汎用性があり、そのキャリアと経験を皆が請うような内容かどうかが先生稼業生き残りの条件だろう。
ここまでの考察から、リタイア直前の状態とリタイア直後の状態が、能力的かつ、経済的にマッチしていてこそ「安定したいい余生」が保証されていると言って良いのではないか?とここでは考察するが、いかがであろうか?
もう一回、ご自身の「いつリタイアしたいの?そのときどのようになっていたいの?」を、いますぐ考えてみて欲しい。リアルであればあるほど具体的であればあるほど、その将来は達成しやすくなる。
次回以降は、「どのようなキャリアを積めば、リタイア後の人生により多くの選択肢と経済的うるおいを持たせることがしやすいか?」について検討する。
ミニテスト2
第一問:キャリアを経る毎に「将来XXになりたい!」って言わなくなってしまうのはなぜか?
第二問:早くリタイアするほうがよりハードルが高くなるのはなぜか?
第三問:30歳から毎年500万円資産形成し、60歳でリタイア、60歳から90歳まで使える年間生活費平均値概算(年金除く)はいくらか?
※ミニテストの回答案は次回の連載で発表します。
前回(第一回)のミニテストと回答案
【ミニテスト1】
第一問:親や先生の時代に言われていた「いい会社」の定義とは何か?
第二問:親や先生の時代に言われていた「いい会社」が今は違ってしまったのはなぜか?
第三問:現在存在する「いい会社」が長持ちする可能性はかつてに比べ、高いか低いか?また、それはなぜか?
A1:「雇用が安定していて、給料が高くて、やりがいがある」こと。
A2:市場の成熟化とグローバル化、規制緩和が進んだこと。インターネットなどの普及もこれらを後押ししている。
A3:トレンド変化のスピードは今後も加速するから。
*注:テスト問題の性質上、回答案は著者の視点からの回答案の一つであり、すべての答えを網羅的にカバーしているとは限りません。
松川 孝一
シンクログローバル株式会社 代表取締役社長
株式会社日本ピーエスエス 代表取締役社長
早稲田大学商学研究科、早稲田大学ビジネススクール 客員教授
早稲田大学IT活用新ビジネス研究会 副理事長
学習院マネジメントスクール 講師・顧問
東京工業大学工学部生産機械工学科卒業。
プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社入社。PwCコンサルティング株式会社 執行役員 パートナー、アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティングサービス株式会社 執行役員 パートナー 公益事業部長、株式会社大洋システムテクノロジー取締役を経て現職。
また現職のかたわら、早稲田大学ビジネススクール客員教授としてIT戦略マネジメントの授業、学習院マネジメントスクール顧問・講師としてABC/ABM、プロジェクトマネジメントの授業を受け持つ。
主著に「図解ABC/ABM(第二版)」東洋経済新報社、共著に「MOT」入門日本能率協会マネジメントセンターなどがある。
ここまでの約10年間の間、計500人以上の様々な会社におけるのプロフェッショナル職のキャリア相談を受けている。
現在、従来からのコストダウン、シェアアップのコンサルティングに加え、新しい事業コンセプト・事業モデルの開発にチャレンジ中。
http://www.syncgl.com/【シンクログローバル株式会社】
http://www.winb.org【早稲田大学IT活用新ビジネス研究会】

